お茶碗を買ったので、帰るだけ。
余計なことはしたくない。
とはいえ、汽車旅は相手があることゆえ、時間が空く。
自動車のような融通は利かないが、いったん乗ってしまえば寝ていても連れて行ってくれる。
ぼうっと車窓から、ありきたりの風景を、さもその土地特有のように眺めるのもおもしろい。
家屋はどこに行っても画一的になったが、山容や平地の有り様は、よく見ると特有のものがある。
これを突き詰めれば地学や歴史学、地理学に、あるいはブラタモリになるのだろうが。
10月14日;宿-(徒歩)-蓑虫庵-茅町駅-(伊賀鉄道)-伊賀上野駅-(関西本線)-加茂-(関西本線大和路快速)-木津-(奈良線都路快速)-京都-(新幹線)-広島
今日は往きと反対に、奈良へ向かってそれから京都へ。
ふつかで時計回りに、ぐるっと一周になる。
どっちを通っても、営業距離数はいっしょ。値段もいっしょ。
宿を出る。
芭蕉生家も、芭蕉翁記念館もすでに行った。
もらった地図に「蓑虫庵」と大きく載っているので、歩く。
重複路線というのが珍しいかと思って、撮った。
左に伊賀上野城が写っているが、昭和10年代議士が私財を投じて建てたもの。
歴史的には、天守閣は建てられることはなかった。
城の南側が城下町になっており、東西に長い。
これは旧大和街道、本町通りを西から東へ望む。
長い直線路は、ちょっとした見物。
地図を見ればわかるが、南北にも直線路が走っているが、所々鍵手になっている。
町の所々に、だんじり蔵がある。
本町通りを折れて、南北に真っ直ぐな中之立町通りを歩く。
店がいろいろ並んでいる。
芭蕉祭のポスター。第74回と由緒正しい。でも、シティマラソンは忍者。
昔で言うと城下町が切れた辺りに、蓑虫庵がある。
芭蕉の伊賀上野の弟子、服部土芳はもと藤堂藩に出仕。芭蕉と20年の再開後、俳諧に専念。
この庵を建てた際、芭蕉より「みの虫の音を聞に来よくさの庵」の句を贈られたのが由来とされる。
「秋十とせ却って江戸をさす故郷」の句を「野ざらし紀行」に載せているが、芭蕉はことあるごとに上野に戻っている。
「手にとらば消えん 涙ぞ熱き秋の霜」同じく「野ざらし紀行」の句であるが、前年逝去の母の法要に立ち寄っている。
有名な「古池や」を模した池。
達磨の掛け軸に「みの虫の音を」の句が賛してある。芭蕉の筆と言われる。これはコピーだが。
御廟歳経て忍はなにをしのぶ草 野ざらし紀行、後醍醐帝廟にての句。
昨夜ATMに「おおきに」と挨拶されたのは微笑ましかったが、
「この奥がって」とは何であろう。
ときどき、本気の方言看板(本人は方言と思っていない)を見つけると、嬉しくなる。
あとでネットで見ると、うどん屋さんがやっている銭湯らしい。
このへんもわかるようでわからない感じが、ビミョウによい。
伊賀鉄道茅町駅
木造駅舎、島ホーム、遮断機、ポイント、踏切と、コンパクトに収められた逸品。
鉄道模型にでもしてみたい風景。
乗客もそこそこいて、市民の足として根付いている。
ここから伊賀上野駅まで行き、あとはJRで、奈良まわりで京都へ。
お茶碗を買うだけという贅沢な旅も、鉄道を使えばこれまたいろいろ楽しい。
1. 無題